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2019年8月16日

高尿酸血症と痛風
血液中の尿酸の濃度が高くなり尿酸値が7.0mg/dlを超えた状態を高尿酸血症と呼びます。高尿酸血症が長く続くと体のあちこちに尿酸の結晶が沈着して、激痛で知られる痛風発作(関節炎)のほか、腎臓の働きが低下する腎障害(痛風腎)や皮膚の下にかたまりができる痛風結節を引き起こすことがあります。尿が酸性になって尿の中に尿酸が溶けにくくなり、尿路結石の原因になることもあります。また、高尿酸血症は高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や慢性腎臓病(CKD)を合併しやすく、動脈硬化を進行させ心筋梗塞や脳卒中などの危険性を高めているとも言われています。

尿酸は、その20%が食品に含まれるプリン体から作られ、残りの80%は体内で遺伝子などが分解されることよって生じます。尿酸は主に尿中に排泄され、体の中の尿酸の量(尿酸プール)は常に一定に保たれていますが、体内で尿酸が作られ過ぎたり、不要になった尿酸が十分に体外に排泄されなくなると高尿酸血症を発症します。

尿酸値が高い状態が続くと、血液中に溶けきれなくなった尿酸の結晶が関節に沈着しますが、激しい運動、ストレス、尿酸値の急激な変動などが誘因となって尿酸の結晶がはがれ落ち、関節の中で炎症が起こることによって、ある日突然腫れと激痛を伴う痛風発作(痛風関節炎)が起こります。最も頻度が高いのは足の親指の付け根の関節ですが、足首、足の甲、膝、手首、肘なども痛風発作が起こりやすい場所とされています。痛風患者さんの95%は男性で、特にアルコールよく飲む方や激しいスポーツをされる方、太っている方などに多いと言われています。痛風発作は1~2週間程度で治まりますが、高尿酸血症を放っておくと発作を繰り返すことがあります。

尿酸値が7.0mg/dlを超えている方はまずは生活習慣の改善が必要ですが、①痛風発作を起こしたことがある、または痛風結節がある方、②尿酸値が8.0mg/l以上で高血圧、糖尿病、尿路結石などの合併症のある方、③尿酸値が9.0mg/dl以上の方はお薬による治療が勧められます。

生活習慣の改善としては、まずは食事の量を抑えて体重を落とすことが重要です。魚卵やレバーなどの尿酸の元になるプリン体の多い食品は控えめにして、野菜や海藻などのアルカリ性食品を積極的にとることにより尿を中性に近づけて尿酸を尿中に溶けやすくすることも有効です。プリン体の量はお酒の種類によって異なりますが、アルコールそのものが尿酸値を上げる原因になり、なるべくアルコールを減らすことが必要です。また、尿酸は主に尿中に排泄されるため、尿の量が増えれば体の中の尿酸が体外へ出やすくなるため、1日2Lを目安に積極的に水分をとることも推奨されています。定期的な運動をすることも勧められますが、激しい運動はかえってエネルギー代謝によって生じる尿酸を増やすことになるため、ウオーキングのような軽い有酸素運動を継続することが効果的です。ストレスも尿酸値を上げる原因になるため、適度な運動や十分な睡眠などでリラックスしてストレスをためないようにすることも必要です。

高尿酸血症に対するお薬(尿酸降下薬)には、尿酸が体の中で作られるのを抑える尿酸生成抑制薬と、尿酸を体の外へ出しやすくする尿酸排泄促進薬があります。尿酸値を6.0m/dl以下に保つと体内に沈着している尿酸の結晶が溶け出し、痛風発作や合併症の危険性が減ると言われていますが、血液中の尿酸の濃度が急激に下がると痛風発作が起こることがあるため、ゆっくりと段階的に尿酸値を下げていく必要があります。

痛風発作が起きた際には、関節の炎症や痛みを抑える治療が中心になります。非ステロイド系抗炎症薬やステロイド薬を使用しますが、できるだけ安静にして患部を心臓より高くして冷やすなどの対処が有効なこともあります。痛風発作は、尿酸値が上がったときだけでなく、急に尿酸値が下がったときにも起こりやすいため、痛風発作の治療には尿酸値を下げるお薬は使いません。発作が治まってから尿酸値を下げる治療を開始しますが、すでに尿酸降下薬を服用されている方は、痛風発作が起こってもそのままお薬を続けてもらいます。

高尿酸血症は痛風や尿路結石の原因になるだけではなく、メタボリックシンドロームとも密接に関係して動脈硬化を進行させ、心疾患や脳血管障害などの重大な疾患の危険因子になります。健康診断などで高尿酸血症を指摘された方、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の治療中で尿酸値が高い方、痛風発作を起こしたことがある方は、生活習慣の見直しやお薬による治療が必要なことがあります。当院では高尿酸血症や痛風の診断、治療も行っておりますので、お気軽にご相談下さい。