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2015年2月8日
慢性前立腺炎
前立腺は膀胱の出口に尿道を取り囲むように存在する男性特有の臓器で、前立腺液を分泌して精子に栄養を与えています。前立腺は若いときにはクルミほどの大きさですが加齢とともに少しずつ大きくなります。前立腺に起こる病気としては前立腺肥大症、前立腺がん、前立腺炎などがあります。
前立腺炎には急性前立腺炎と慢性前立腺炎があり、後者はさらに①慢性細菌性前立腺炎、②慢性非細菌性炎症性前立腺炎、③慢性非細菌性非炎症性前立腺炎に分けられます。急性前立腺炎は主に大腸菌などの細菌感染によって発症し、発熱、排尿困難、残尿感、頻尿、排尿時痛などを生じるもので、抗生物質による治療が中心になります。これに対し慢性前立腺炎は残尿感、頻尿、排尿時痛のほか、会陰部(陰のうと肛門の間)や鼠径部の痛み、睾丸や尿道の不快感、射精時痛などさまざまな症状が出現します。細菌が原因となる場合でも感染経路がはっきりしないことが多く、ほとんどの場合は原因を特定することが困難です。慢性前立腺炎のどの種類に該当するのかは尿検査によって判断します。通常の尿検査で尿の中に細菌が認められれば①慢性細菌性前立腺炎と診断できますが、慢性前立腺炎では炎症の程度が軽いため自然排尿した尿に異常を認めないこともあります。この場合は直腸から指を入れて前立腺をマッサージして前立腺液を尿道へもみ出してから排尿してもらい、この尿を検査することもあります。前立腺マッサージ後の尿に細菌が認められれば①慢性細菌性前立腺炎、細菌は認められないが白血球が認められれば②慢性非細菌性炎症性前立腺炎、細菌も白血球も認められなければ③慢性非細菌性非炎症性前立腺炎と診断します。ただこの検査は直腸から指を入れる際に苦痛を伴う場合もあり、治療方針にあまり影響がないこともあるため、患者さんと相談して通常の尿検査しか行わないこともあります。
慢性前立腺炎の治療は抗生物質、植物製剤、漢方薬などのお薬による治療が中心になりますが、アルコールや刺激物を控えめにする、疲れやストレスをためないようにする、長時間の座位を避ける、体を冷やさないようにする、ゆっくりお風呂に入って体を温める、適度な運動をするなどの生活習慣の改善も重要です。
慢性前立腺炎は日々ストレスと闘っている働き盛りの男性に多い病気です。すぐには改善しないことも多く痛みや不快感が持続し生活の質を低下させることもありますが、命にかかわる病気ではありませんので生活習慣の改善をしながらお薬による治療をしっかりと行っていくことが必要です。
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