2024年4月以降、マイコプラズマ肺炎の報告数が増加しており、これから秋に向けて流行が拡大するおそれがあります。
マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症です。幼児期、学童期、青年期を中心に全年齢で1年を通してみられ、冬にやや増加する傾向があります。
感染経路は、咳やくしゃみなどのしぶきに含まれる病原体による飛沫感染と、病原体が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染がありますが、学校などでの短時間の曝露による感染拡大の可能性は高くはなく、友人間や家族間などでの濃厚接触より感染します。
マイコプラズマ肺炎は周期的に大流行を起こすことが知られており、日本では従来4年周期でオリンピックのある年に流行を繰り返してきましたが、近年この傾向は崩れつつあります。
感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、2~3週間くらいとされています。発熱、全身倦怠感、頭痛などの症状で発症し、咳は初発症状出現後3~5日から始まることが多く、当初は痰を伴わない乾性の咳ですが、経過とともに徐々に増悪し、熱が下がった後も3~4週間の長期にわたり続くのが特徴です。嗄声、耳痛、咽頭痛、消化器症状、胸痛、皮疹などの症状を認めることもあり、重症肺炎となることもあります。また、無菌性髄膜炎、脳炎、中耳炎などの合併症を引き起こすこともあります。
確定診断には、咽頭ぬぐい液、喀痰からの肺炎マイコプラズマの分離、血液検査による抗体測定などを行います。
治療は抗菌薬による化学療法を行いますが、肺炎マイコプラズマは細胞壁を持たないため、ペニシリン系やセフェム系などの細胞壁合成を阻害する抗菌薬は感受性がなく、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系の薬剤が用いられます。
感染しないようにするためには、手洗い、うがいなどの一般的な感染対策と、感染者との濃厚な接触を避けることが重要です。