E型肝炎はE型肝炎ウイルス(HEV)による感染症で、A型肝炎と同じく主に汚染された飲み水や食べ物を介して感染します。ブタ、シカ、イノシシ、ウシなどの多くの動物がE型肝炎ウイルスに感染することが分かっており、これらの肉や内臓を調理する際には十分に火を通すなど、感染防止対策が必要です。
E型肝炎ウイルスに感染すると、2~10週間(平均6週間)の潜伏期間の後、発熱、全身倦怠感、食欲不振、黄疸(皮膚や目の白い部分が黄色くなること)などの症状が現れます。これらの症状は通常は一過性で、2~6週間程度で回復しますが、まれに重症化して劇症肝炎という重篤な病態に移行することもあり、回復するまでに数ヶ月かかることもあります。
E型肝炎の診断は血液検査により行います。肝臓の炎症に伴って肝細胞が破壊され、AST、ALTなどの数値が上昇します。また、保険適用になっている抗体(IgA型HEV抗体)の測定を行い、陽性となっていることを確認します。
E型肝炎に対しては特別な治療はなく、症状を軽減するための対症療法が中心となります。通常は一過性の感染で予後は良好ですが、高齢者や免疫抑制剤を使用している方、免疫不全の方などは重症化することがあり注意が必要です。
A型肝炎やB型肝炎と異なり、現在日本で使用できるE型肝炎の予防ワクチンはありません。流行地域へ旅行する際は、生水や氷入り飲料、非加熱の貝類、非調理の果物や生野菜の摂取には注意が必要です。特に、ブタ、シカ、イノシシなどの動物の肉や内臓を摂取する際は、中心まで火が通るように十分に加熱することが重要です。