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2025年8月18日NEW!

前立腺がんの診断と治療
わが国では毎年10万人近くの方が新たに前立腺がんと診断されています。前立腺がんの多くは進行が遅いと言われていますが、毎年1万人ほどの方が前立腺がんで亡くなっており、早期発見と的確な治療を行うことが重要です。
前立腺がんは欧米諸国では以前から多いがんでしたが、最近は日本でも増えてきました。危険因子としては、高齢、遺伝的要因、食生活の欧米化などがあげられます。70歳以上で発症する方が多いがんですが、家族性の場合は、40歳代など若い方でも発症することがあるため、早めの検診を受けることが勧められます。早期の前立腺がんは自覚症状がない場合が多く、症状が出る頃にはある程度がんが進行していると考えられますが、他臓器のがんに比べ予後はよいため、早期に発見し適切な治療を行うことで根治が望めます
前立腺がんの診断のためには、血液検査でPSA(前立腺特異抗原)と呼ばれる腫瘍マーカーを調べる検査、直腸診、超音波検査、MRI検査などが行われますが、確定診断には、細い針を前立腺に刺して組織を採取する前立腺生検が必要です。前立腺生検の方法としては、超音波検査で前立腺を確認しながら、直腸内腔から針を刺す「経直腸式」と会陰部(肛門と陰嚢の間)から針を刺す「経会陰式」があります。
前立腺がんと診断された場合は、病期(ステージ)診断のため、CT検査や骨シンチグラフィーを行い、骨やリンパ節、その他の臓器に転移していないかを調べます。前立腺がんの治療法を選択する際には、がんの進行の程度(病期分類)、悪性度(グリソンスコア)、PSA検査値により病態を評価する必要があります。
前立腺がんには、早期にみつかり症状のないまま経過し最終的に死亡の原因とならないものも存在することが明らかになっており、治療を行わずに経過を観察していく監視療法が選択されることもあります。
前立腺内にがんがとどまっている限局性の前立腺がんの場合は、前立腺と精嚢を切除する前立腺全摘除術の対象となります。手術の方法には開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術があり、術後の合併症として尿失禁や性機能障害などが起こることがあります。
放射線治療は、ほとんどの病期で対象となりますが、限局性の前立腺がんでは手術と同等の成績で根治が期待できます。外照射療法と内照射療法の2つに大別され、年齢を問わず治療が受けられます。合併症としては、頻尿、血尿、血便、下痢、性機能障害などが起こることがあります。
また、前立腺がんは男性ホルモンの刺激で病気が進行する性質があり、お薬で男性ホルモンの作用を抑える内分泌療法(ホルモン療法)が行われることもあります。ただ、内分泌療法は根治を目指す治療ではなく、前立腺がんの進行を抑えるための治療であり、限局性の前立腺がんの場合は放射線治療の効果を高めるために一定期間併用する場合がほとんどです。内分泌療法の副作用としては、性機能障害、筋力低下、骨粗鬆症などを生じることがあります。