JavaScriptを有効にしてご覧ください。

ブログ
blog

2020年2月12日

季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)治療薬「ゾレア」
季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)は、スギやヒノキなどの花粉が原因となってくしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどのアレルギー症状を引き起こす病気です。花粉が体内に侵入すると、花粉と結合する性質をもつIgE抗体が作られます。花粉とIgE抗体が炎症にかかわる細胞であるマスト細胞にくっつくことによって、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症を起こす化学物質が放出され、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の症状が起こります。これまでは炎症を起こす化学物質の働きを抑える抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬の内服や点鼻薬、点眼薬などが治療の中心でしたが、アレルギー反応の元を抑える新しいお薬の「ゾレア」が2019年12月に季節性アレルギー性鼻炎に対して適応拡大されました。「ゾレア」は2009年1月より気管支喘息、2017年3月より慢性蕁麻疹の治療に使われており、花粉のIgEとくっついてIgEがマスト細胞と結合できなくすることでアレルギー反応を元から抑えるヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体と呼ばれるお薬で、抗ヒスタミン薬などの従来の花粉症治療薬とは異なるメカニズムを持っています。

「ゾレア」は既存の治療を行っても効果不十分な重症または最重症の季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の12歳以上の方に、抗ヒスタミン薬と併用して月に1~2回の皮下注射を行います。治療の前に血液検査を行って、スギ花粉抗原に対する血清特異的IgE抗体がクラス3以上であることと血液中の総IgE値が30~1,500IU/mlの範囲にあることが「ゾレア」を使うための条件になります。「ゾレア」は通常、1回75~600mgを2週間または4週間毎に医療機関で皮下注射を行いますが、投与量と投与間隔は体重と血液中のIgEの量によって決まります。スギ花粉の飛散時期(おおむね2~5月)を考慮して投与しますが、原則として12週までの治療となります。「ゾレア」による治療を受けていただくことにより、花粉症の症状をコントロールして、仕事や勉強に集中できるようになったり、外出時のつらさが和らぐなどの効果が期待できます。「ゾレア」の主な副作用は注射部位の反応で、注射した場所が赤くなったり腫れたりすることがあります。アナフィラキシーなどの重篤な副作用が起こる可能性もあり注意が必要です。

「ゾレア」の薬価は75mgで23,625円、150mgで46,490円(※2019年12月現在)であり、投与量によっては高額療養費制度や医療費控除の対象となる場合もあります。例えば、ゾレア300mgを4週間に1回投与する方の1ヶ月の薬剤費は92,980円となり、自己負担額は3割負担の方で27,894円、1割負担の方で9,298円となります。実際に治療を受けていただく際の医療費には、ゾレアの薬剤費以外にも診察や検査の費用、ゾレア以外の薬剤費が含まれます。

スギ花粉症に対しては長期寛解も期待できるアレルゲン免疫療法(減感作療法)も治療の選択肢となり、「ゾレア」を含む薬物療法は対症療法となりますが、花粉症によるつらい症状を改善できることが期待されます。「ゾレア」による季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の治療をご希望の際はお気軽にご相談下さい。

※薬価改定により「ゾレア」の薬価は、2020年4月より75mgで14,812円、150mgで29,147円となっております。