高血圧はほとんどの場合自覚症状はありませんが、血圧が高い状態が続くと全身の血管の動脈硬化が進み、脳卒中や心臓病の危険が高まります。
高血圧の9割は原因が特定できない本態性高血圧ですが、残りの1割はある特定の原因によって血圧が上昇する二次性高血圧と言われています。
二次性高血圧は頻度は低いものの原因を同定し治療することにより効果的に血圧を低下させることができるため常に念頭に置いておく必要があります。
当院では日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」に示された下記の降圧目標値に基づいた血圧管理を行っています。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
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130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
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140/90mmHg未満 | 135/85mmHg未満 |
診察時にも血圧測定は行いますが、可能な限りご家庭でも血圧を測定していただき血圧手帳などに記録して診察時に持参していただくようにしています。
高血圧の治療は生活習慣の改善を基本に、リスクの度合いによってお薬による治療が加わります。
生活習慣の改善としては、塩分制限(1日6g未満)を中心とした食事療法、適正体重の維持、有酸素運動を中心とした運動療法、節酒、禁煙などが重要です。
糖尿病は膵臓のβ細胞から分泌される「インスリン」というホルモンの量が不足したり、働きが悪くなることにより血液に含まれる糖分(血糖)が多くなる病気です。
糖尿病には1型と2型の2種類があり、日本では全糖尿病患者の約95%が「2型糖尿病」といわれるタイプです。
糖尿病は初期の段階ではほとんどが無症状のため、血液検査をして初めて糖尿病と診断されることが多いのですが、高血糖状態が続くと「のどが渇く」、「水分の摂取量が増える」、「尿の量が増える」、「体重が減少する」、「疲れやすくなる」といった自覚症状があらわれてきます。
糖尿病の診断は血液検査によって行います。血液検査では血糖値と過去1~2ヶ月間の平均血糖値を反映する指標であるHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)を調べます。その結果が下記の基準を満たせば「糖尿病型」と判定されます。
HbA1c | 血糖値(次の3つのいずれかを測定) | |||
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糖尿病型 | 6.5%以上 | 空腹時血糖値126mg/dl以上 | 随時血糖値200mg/dl以上 | OGTT2時間値200mg/dl以上 |
空腹時血糖値:当日の朝ごはんを抜いて10時間以上絶食の状態で測定した血糖値
随時血糖値:食事と採血時間との時間関係を問わないで測定した血糖値
OGTT(経口ブドウ糖負荷試験):一定量のブドウ糖が含まれた飲料を飲んで、血糖値や血中インスリン濃度がどのように変化するかを調べる検査
糖尿病の治療は食事療法と運動療法が基本になりますが、それでも血糖値が十分にコントロールできない場合は内服薬やインスリンなどの注射薬による薬物療法を行います。
治療薬は「インスリン分泌非促進系」「インスリン分泌促進系」「インスリン製剤」の3種類に大きく分けられ、患者様の病状などを考えて選択します。
注射薬には不足しているインスリンを体外から補い血糖値を下げる「インスリン製剤」と血糖値に応じてインスリンの分泌を促す「GLP-1受容体作動薬」の2種類があります。GLP-1受容体作動薬は、低血糖や体重増加を起こしにくいといった特徴があります。
糖尿病が進行すると色々な合併症が出てきますが、細い血管にみられる障害(細小血管障害)と大きな血管にみられる障害(大血管障害)の大きく2つに分かれます。
病期 | 尿アルブミン値(mg/gCr)あるいは 尿蛋白値(g/gCr) |
GFR(eGFR) (ml/分/1.73m2) |
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第1期 (腎症前期) |
正常アルブミン尿(30未満) | 30以上 |
第2期 (早期腎症期) |
微量アルブミン尿(30~299) | 30以上 |
第3期 (顕性腎症期) |
顕性アルブミン尿(300以上)あるいは 持続性蛋白尿(0.5以上) |
30以上 |
第4期 (腎不全期) |
問わない | 30未満 |
第5期 (透析療法期) |
透析療法中 |
尿アルブミン(尿蛋白)値は、採尿時間、食事、飲水の影響を除外するため、尿アルブミン濃度(尿蛋白濃度)と尿中クレアチニン濃度を測定し、その比をとって評価します。
GFRとは糸球体濾過量のことで腎機能の指標となる数値ですが、複雑な検査をしなければ測定できないため、日常診療においては年齢、性別、血清クレアチニン濃度から計算される推算糸球体濾過量(eGFR)を使用しています。
HbA1c7.0%未満が合併症予防のための目安です
目標 | 血糖正常化を目指す際の 目標 |
合併症予防のための 目標 |
治療強化が困難な際の 目標 |
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HbA1c(%) | 6.0未満 | 7.0未満 | 8.0未満 |
治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定します。 合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とし、空腹時血糖値130mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満を目安とします。
脂質異常症は血液中の中性脂肪(トリグリセライド)やLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が基準より高い、またはHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が基準より低い状態のことです。
以前は高脂血症と呼ばれていましたが、低HDLコレステロール血症も動脈硬化性疾患との関連が強いため「脂質異常症」という診断名が使われるようになりました。
LDLコレステロール | 140mg/dl以上 | 高LDLコレステロール血症 |
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120~139mg/dl | 境界域高LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール | 40mg/dl未満 | 低HDLコレステロール血症 |
トリグリセライド(中性脂肪) | 150mg/dl以上(空腹時採血) | 高トリグリセライド血症 |
175mg/dl以上(随時採血) | ||
Non-HDLコレステロール | 170mg/dl以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
150~169mg/dl | 境界域高non-HDLコレステロール血症 |
血液中の尿酸が多くなり血清尿酸値が7.0mg/dlを超えた状態を「高尿酸血症」と呼びます。
高尿酸血症が長く続くと、尿酸塩(尿酸の結晶)が体のあちこちにたまり、激しい痛みを伴う「痛風発作」をはじめとするさまざまな症状を引き起こします。
また、高尿酸血症はメタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病や慢性腎臓病(CKD)を合併しやすく、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中などを起こすリスクを高めるといわれています。
高尿酸血症の原因には、尿酸が体内で多く産生される「産生過剰型」と尿酸の排泄が悪い「排泄低下型」の2つのタイプがあり、両者を合併している場合(「混合型」)もあります。
高尿酸血症といわれたら、まずは生活習慣を見直すことが大切です。
尿酸値を下げるお薬には、尿酸が体の中で作られるのを抑えるお薬(尿酸生成抑制薬)と尿酸を体の外へ出しやすくするお薬(尿酸排泄促進薬)の2種類があり患者様の病態に合わせて選択します。
尿酸値を急激に下げると痛風発作を起こしてしまうことがあるため、尿酸値をゆっくり下げるために、お薬は少量から飲み始め、段階的に適切な量まで増やしていきます。
痛風発作や合併症のリスクを減らすためには、尿酸値を6.0mg/dl以下にコントロールすることが必要です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は空気の通り道である気管支や、気管支の先にある酸素を血液の中に取り込むための肺胞に炎症を起こす病気です。
COPDの主な症状は「咳」「痰」「息切れ」といった、日常的なありふれた症状のため見過ごされることも少なくありませんが、日本での患者数は530万人以上で死因の第9位に位置しており、初期の段階で病気を発見し適切な治療を行うことがきわめて重要です。
COPDの原因はいろいろありますが、別名「タバコ病」とも呼ばれるように、最も重大な要因は喫煙で、COPD患者様の約90%が喫煙者です。
40歳以上で喫煙歴が10年以上あり、坂道などで呼吸が苦しくなる、3週間以上咳や痰が続いている、最近かぜをひきやすい、といった症状のある方はCOPDの可能性があります。
当院では、COPDが疑われる患者様にはスパイロ検査という簡単な肺の検査をお勧めしています。
スパイロ検査とはCOPDの診断確定に必須の検査で、スパイロメータと呼ばれる器械を使用して、患者様の口元から出入りする空気の量や速さを測定する検査です。検査にかかる費用は自己負担3割の方で約1,000円です。
現在のところCOPDを根本的に治せる治療法はありませんが、早期発見・早期治療により疾患の進行を遅らせ、重症化を防ぐことができます。COPDの治療の第一歩としてまず取り組むべきことは禁煙です。
禁煙はもっとも重要で効果的な治療法です。
またCOPD患者様が感染症にかかると重症化しやすいため、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種しておくことが推奨されています。
その他、散歩などの日常的な規則正しい運動を行うことや、適正体重を維持するための栄養管理も大切です。
お薬による治療は息切れや慢性の咳・痰といった症状を改善させるのに有用で、気管支を広げるお薬(気管支拡張薬)の吸入が中心となります。
気管支拡張薬には抗コリン薬とβ2刺激薬の2種類があり、症状に応じていずれか一方を使用、あるいは両者を併用します。悪化を繰り返す患者様にはこれらに加えて、ステロイドの吸入や痰を出しやすくするお薬、抗生物質などを併用することもあります。
呼吸機能の低下が進んで十分な酸素を体の中に取り込めなくなると、持続的に酸素補給を行う在宅酸素療法が必要となります。
持続して酸素を吸入することで心臓の負担を減らし、活動性を高めることができます。
COPDは喘息や肺がんといった肺の合併症だけではなく、全身性の影響をもたらしてさまざまな疾患を併存することから全身性疾患ともいわれています。
代表的な併存症には、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などの心・血管疾患、筋力の低下、骨粗鬆症、睡眠障害、逆流性食道炎、糖尿病、うつ傾向などがあり、総合的な治療を行っていく必要があります。
タバコが体に悪いことを知らずに吸っている人はほとんどいないでしょうが、具体的にどのような病気と関連しているのでしょうか?
肺がんやタバコ病と呼ばれる慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった呼吸器の病気はもちろんですが、タバコを吸っていると、動脈硬化が原因で起こる心臓の病気や脳卒中など、全身の様々な病気にかかりやすくなります。
その他にも、喉頭がんや膀胱がん、子宮頸がんなど多くの部位のがんや、糖尿病、メタボリックシンドローム、胃潰瘍、不妊などのリスクが高くなることも知られています。
しかしながら本人の意志の力だけでタバコをやめられる人はごくわずかであり、やめられない喫煙は「ニコチン依存症」という治療が必要な病気であるとの認識から、2006年より禁煙治療に健康保険が適用されるようになりました。
設問内容 | はい1点 | いいえ0点 |
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問1. 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。 | ||
問2. 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか? | ||
問3. 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか。 | ||
問4. 禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか。(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加) | ||
問5. 問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。 | ||
問6. 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。 | ||
問7. タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 | ||
問8. タバコのために自分に精神的問題(注)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 | ||
問9. 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。 | ||
問10. タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。 |
(注)禁煙や本数を減らした時に出現する離脱症状(いわゆる禁断症状)ではなく、喫煙することによって神経質になったり、不安や抑うつなどの症状が出現している状態。
呼気CO濃度(ppm) | 喫煙レベル(喫煙本数換算) |
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0~7 | 非喫煙者 |
8~14 | ライトスモーカー(14本以下) |
15~24 | ミドルスモーカー(15~24本) |
25~34 | ヘビースモーカー(25~34本) |
35以上 | 超ヘビースモーカー(35本以上) |
健康保険が適応される禁煙の薬には、ニコチンを含まない飲み薬であるチャンピックスと、ニコチンを皮膚から吸収させる貼り薬であるニコチネルTTSの2種類があります。患者様のご希望や病状によりいずれかの薬を選択します。
標準的な禁煙治療のスケジュールでは、12週間にわたり計5回の診察を行います。初回診察から2週間後、4週間後、8週間後、12週間後の計4回、通院していただくことになります。(2回目から4回目は対面診療、またはオンライン診療)
薬の副作用が強く出た場合などは、12週間の治療期間内であれば薬の変更が可能です。
また、禁煙治療にかかる費用は使用する薬にもよりますが、自己負担3割の方で総額13,000円~20,000円程度です。
眠っている間に呼吸が止まる病気で、体に取り込まれる酸素の量が少なくなり、さまざまな臓器に障害を起こします。Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって、「SAS(サス)」とも呼ばれています。
無呼吸とは、呼吸が10秒以上止まっている状態で、これが7時間の睡眠中に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上あると睡眠時無呼吸症候群となります。
太った男性がかかる病気というイメージがあるかもしれませんが、太っていなくても、やせていても、女性でもかかる病気です。
寝ている間 | 起きたとき | 起きているとき |
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SASには閉塞性睡眠時無呼吸と中枢性睡眠時無呼吸の2つのタイプがあります。
閉塞性睡眠時無呼吸は、空気の通り道である上気道のスペースが狭くなり、呼吸が止まってしまうタイプで、SAS患者さんのほとんどが該当します。
中枢性睡眠時無呼吸は、脳から呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の異常で、心臓の機能が低下した方などにみられます。SASの中でもこのタイプは数%程度です。
SASには、さまざまな生活習慣病が合併します。
昼間の眠気があったり、SASに特徴的ないびきなどがありSASが疑われる患者さんには、睡眠中の状態を調べる検査を行います。
当院ではご自宅で普段どおりに寝ながら検査を受けていただける体制をとっていますので、仕事や日常生活に支障を来さずに検査を受けることができます。
また入院をしていただく必要がありませんので、より安価な費用で検査を受けていただけます。
まずは無呼吸の有無を確認するため、簡易の検査を行います。携帯型の装置を就寝時に装着し、睡眠中の呼吸状態や体の中の酸素の量(酸素飽和度)、脈拍数、体動などを調べます。簡易検査にかかる費用は、自己負担3割の方で約2,700円です。
睡眠と呼吸の「質」を調べる検査で、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査と呼ばれます。脳波、眼電図、筋電図、口と鼻の空気の流れ、胸部・腹部の呼吸運動、心電図、酸素飽和度、睡眠時の姿勢などを調べます。これらの項目を調べるために、体にたくさんのセンサーをつけますが、痛みを伴う検査ではありません。検査員がご希望日にご自宅におうかがいし、センサーを装着させていただきます。
おやすみになられる時間は、ご自身のタイミングで構いません。翌朝、検査員が機械の回収におうかがいし、およそ1週間後に検査結果をご報告させていただきます。精密検査にかかる費用は、自己負担3割の方で約10,000円です。
閉塞性睡眠時無呼吸に対する治療として、もっとも普及している治療法です。寝ている間の無呼吸を防ぐために気道に空気を送り続けて、気道の閉塞を防ぐというものです。
下あごを上あごよりも前方に出すように固定させることで上気道を広くし、いびきや無呼吸を起こりにくくする治療法です。比較的軽症の閉塞性睡眠時無呼吸には効果がみられやすいものの、重症の患者さんには治療効果が不十分な場合もあります。
SASの原因がアデノイドや扁桃肥大などの場合は、摘出手術が有効なことがあります。 軟口蓋(のどちんこ)を切除する方法もありますが、治療効果が不十分であったり、数年後にSASが再発することがあります。
また、海外では上あごや下あごを広げる手術も行われていますが、日本ではあまり行われていません。
骨粗しょう症とは、骨の量が減少したり、骨の質が悪くなって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。
初期段階ではほとんど自覚症状がありませんが、進行にともなって腰が曲がったり、背中が湾曲したり、背中や腰の痛みを感じるようになります。
また、ちょっとしたことで脚の付け根の骨(大腿骨頸部)などが折れて身体機能の低下につながることもあります。
カルシウムは骨を作る材料となるため、カルシウムが不足すると骨が弱くなります。
女性ホルモンの1つであるエストロゲンは、骨にカルシウムを蓄える「骨形成」を促すとともに、骨からカルシウムが溶け出す「骨吸収」を抑える働きがあるため、女性は閉経期を迎えると骨粗しょう症が非常に多くなります。
「骨形成」と「骨吸収」は、副甲状腺ホルモン、ビタミンD、カルシトニン、エストロゲンといったカルシウム調節ホルモンなどによってコントロールされています。これらのホルモンのバランスがくずれると、骨の異常が起こりやすくなります。
男性も女性も20歳前後で最大骨量に達し、40歳代半ばくらいまでは一定の骨量を維持できますが、その後は加齢とともに徐々に減りはじめます。骨量の減少スピードを遅らせることはできますが、加齢による骨の老化はさけられません。
タバコはカルシウムの吸収を妨げ、骨密度を減少させます。適度な飲酒は問題ありませんが、飲みすぎは骨粗しょう症を悪化させます。また、運動不足により骨が弱くなったり、転びやすくなったりして、骨折する危険性が高くなります。
ステロイドの長期服用、関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)などにより骨がもろくなることもあり、続発性骨粗しょう症と呼ばれています。
骨粗しょう症の治療は薬物療法が中心になります。いろいろな種類がありますが、以下のようなお薬が主に使われます。
骨吸収を強力に抑えるお薬で、わが国でもっとも多く使われています。1日1回、1週間に1回、1ヶ月に1回服用する飲み薬や、1ヶ月に1回や1年に1回投与する点滴注射薬もあります。
腸からのカルシウムの吸収を増やすはたらきがあります。
女性ホルモンのエストロゲンと似た薬で、骨吸収を抑える作用があります。
骨の基になる物質を強くする力があります。
注射をすることにより、骨粗しょう症による背中や腰の痛みを和らげます。
カルシウム不足の方が長期間服用することにより、骨密度が増加します。
骨の形成を促進し骨の量を増やすことで、骨折などの危険性を低下させます。
破骨細胞による骨吸収を抑えることで、骨量低下などを改善させます。
骨の形成を促進すると同時に骨吸収を抑えることで、骨強度を改善させます。
骨粗しょう症の予防には食事と運動が重要です。
骨の材料となるカルシウムを含めた栄養バランスのとれた食生活と、ウォーキングなどの適度な運動により骨と一緒に筋力とバランス力をアップすることが骨粗しょう症の予防につながります。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に生息しているらせんの形をした細菌で、胃炎や胃潰瘍などの胃の病気に深くかかわっています。ピロリ菌の感染経路はまだはっきりとわかっていませんが、口を介した感染(経口感染)が主な経路と考えられています。
感染率は衛生環境と関連しており、50歳以上の日本人の70~80%以上が感染しているといわれていますが、若い世代の感染率は急速に低下しています。
ピロリ菌に感染すると胃に炎症が起こり、この状態が長く続くと、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎(胃粘膜の胃酸などを分泌する組織が消失した状態)を引き起こし、その一部は胃がんに進展していきます。
空腹時痛、胸やけや吐き気、胃もたれや食後の腹痛、食欲不振などが続くとき、ピロリ菌の除菌が有効な場合があります。また、ピロリ菌を除菌することにより、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発を抑えたり、新しい胃がんが発生する確率を減らせる可能性があります。
ピロリ菌の検査には、内視鏡により採取した胃の組織を用いる方法と、内視鏡を使わない方法(尿素呼気試験、抗体測定、便中抗原測定)があります。
ピロリ菌がいる場合には、胃酸の分泌を抑えるお薬と2種類の抗菌薬を7日間服用していただきます。その後4週間以上あけてピロリ菌の検査を行い、ピロリ菌がいなければ除菌成功です。ピロリ菌がいる場合には、お薬の一部を変更してもう1度除菌療法を行い、4週間以上あけてピロリ菌の検査を行います。
1回目の除菌療法の成功率は約80%で、1回目と2回目の除菌療法を合わせた除菌率は95%を超えるといわれています。
除菌療法の副作用には以下のようなものがあります。
便がゆるくなったり、下痢を起こすことがあります。
食べ物の味をおかしいと感じたり、にが味や金属のような味を感じたりすることがあります。
AST(GOT)やALT(GPT)といった肝臓の機能を示す検査値が変動することがあります。
発疹やかゆみなどのアレルギー症状が出ることがあります。
「逆流性食道炎」は胃酸の逆流によって引き起こされる病気です。胃酸は酸性度が強いため、胃から食道への逆流が繰り返し起こると、食道の粘膜にただれや潰瘍が生じ、胸やけや呑酸(のどの辺りや口の中が酸っぱい感じがする)といった不快な症状が起こります。
胃酸の逆流があり、胸やけなどの症状があるにもかかわらず、食道の粘膜にただれや潰瘍がない場合は「非びらん性胃食道逆流症」と呼ばれます。
食べ過ぎ、タンパク質や脂肪の多い食事、加齢、肥満などにより、胃から食道への逆流を防いでいる下部食道括約筋による締め付け機能の低下や、胃酸が増えすぎることが原因になります。
胸やけや呑酸のほか、胸の痛み、咳、のどの違和感・声がれ、おなかの張り、胃もたれ、げっぷ、胃の痛みなどがあらわれることがあります。
胃酸の分泌を抑えるお薬による治療が中心になります。
胃酸を分泌する仕組みの最終段階であるプロトンポンプに結合することで、その働きを抑えます。症状があるときに使われますが、再発を繰り返す場合には薬を飲み続けてもらうこともあります。
胃酸を分泌させる働きのあるヒスタミンという物質が受容体に結合するのを防ぐお薬です。
その他、食道の粘膜を保護するお薬や消化管の運動機能を改善するお薬などを使うこともあります。
また、脂肪分やタンパク質の多い食事を取り過ぎないようにすることや、アルコールやコーヒーを減らす、禁煙に取り組む、といった生活習慣の改善も大切です。