慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)とは慢性に経過するすべての腎臓病のことで、今や患者数が1300万人を超える、国民病ともいえる病気です。
蛋白尿などの尿の異常や糸球体濾過量で表される腎臓機能の低下した状態が3ヵ月以上続いているとCKDと診断され、糸球体濾過量と蛋白尿の程度により重症度が決まります。
CKDの重症度が高まるにつれて、腎機能の悪化だけでなく、心臓病や脳卒中などの心血管疾患にもなりやすいことが明らかになっており、早期発見、早期治療が重要です。
ステージ分類 | 糸球体濾過量(mL/分/1.73m2) |
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G1 | ≧90(正常または高値) |
G2 | 60~89(正常または軽度低下) |
G3a | 45~59(軽度~中等度低下) |
G3b | 30~44(中等度~高度低下) |
G4 | 15~29(高度低下) |
G5 | <15(末期腎不全) |
ステージ分類 | 原疾患 | |
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糖尿病 | 高血圧、腎炎、多発性嚢胞腎など | |
尿アルブミン量(mg/日) | 尿蛋白量(g/日) | |
A1 | 30未満 | 0.15未満 |
A2 | 30~299 | 0.15~0.49 |
A3 | 300以上 | 0.50以上 |
CKDと診断されたら、まずは禁煙、減塩、肥満の改善といった生活習慣の改善を行います。その上で、血圧、血糖、脂質などの厳格なコントロールとステージに応じた食事療法をしていきます。
CKDが進行すると、貧血になったり、カルシウムやリン、カリウムといったミネラルのバランスが崩れるため、これらに対する治療も必要になります。尿から排泄できなくなった毒素や不要な老廃物が体の中にたまると、全身のだるさ、吐き気、皮膚のかゆみ、睡眠障害などの尿毒症症状が出現し、人工透析や腎臓移植が必要になることもあります。
前立腺は男性特有の臓器で、前立腺液といわれる精液の一部を作っています。膀胱のすぐ下に、尿道を取り巻くようにあるため、前立腺が大きくなったり、前立腺の筋肉が過剰に縮まって尿道が圧迫されると、「おしっこが出にくい」といった症状が起こります。
また、尿の出が悪い状態を解消しようと膀胱が過敏になったり、完全に尿を出し切れなくなることで、「トイレが近い」、「おしっこが残っているような感じがする」といった様々な症状が出てきます。このような状態を前立腺肥大症といいます。
この1ヶ月の間に、どれくらいの割合で次のような症状がありましたか? | なし | 5回に 1回未満 |
2回に 1回未満 |
2回に 1回位 |
2回に 1回以上 |
ほとんど いつも |
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尿をした後に尿がまだ残っている感じがありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
尿をしてから2時間以内に、もう一度尿をしなければならないことがありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
尿をしている間に尿が何度も途切れることがありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
尿を我慢することが難しいことがありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
尿の勢いが弱いことがありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
尿をはじめるために、おなかに力を入れることがありましたか? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
夜寝てから朝起きるまでに、ふつう何回尿をするために起きましたか? | 0回 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回以上 |
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
I-PSSの合計点数が8点以上であれば前立腺肥大症の可能性があり、8~19点の場合は中等症、20~35点の場合は重症となります。
前立腺肥大症の治療は薬物療法が中心になり、以下に示すお薬が主に使われます。
この他にも、植物エキス製剤や漢方薬などを使うこともあります。
お薬による治療を行っても症状が十分に改善しない場合には、前立腺を切除する手術が行われます。
前立腺がんはもともと欧米に多い病気でしたが、近年では日本でも前立腺がんの罹患数が増加しています。
前立腺がんが増えている原因としては、高脂肪食など食生活の欧米化、日本人の高齢化、PSA検査の普及などが考えられています。
前立腺がんは尿道から離れた前立腺の外側にできることが多いため、初期には自覚症状がないことがほとんどです。早期発見のためには、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA検査を定期的にうけることが大切です。PSAは血液検査で調べることができます。50歳になったら前立腺がん検診を受けられることをお勧めします。
PSAの基準値は、一般に4.0ng/ml以下とされていますが、PSA値は健康な人でも加齢とともに高くなることから、年齢に応じた基準値も参考にする必要があります。
年齢 | 50~64歳 | 65~69歳 | 70歳以上 |
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PSA基準値(ng/ml) | 3.0以下 | 3.5以下 | 4.0以下 |
PSA値や直腸診(肛門から直腸の中に指を入れて前立腺の状態を調べる検査)、超音波(エコー)検査、MRI検査などにより前立腺がんの疑いがあれば前立腺の組織を採ってがん細胞があるかどうかを調べます。
前立腺がんと診断されたら、がんの進み具合や患者さんのご希望などを総合的に判断し、治療法を選択します。主な治療法には以下のようなものがあります。
膀胱が勝手に縮んだり過敏な働きをするために、尿が充分たまっていないうちに急にがまんできないような尿意が起こったり、トイレが近くなったりする病気です。
脳卒中などの後遺症で、脳と膀胱の筋肉を結ぶ神経の回路に障害が起きた場合や、女性では出産や加齢によって、子宮、膀胱、尿道などを支えている筋肉が弱くなった場合、男性では前立腺肥大症により尿が出にくい状態が続いた場合などに起こりますが、原因が特定できないことも少なくありません。
1.朝起きた時から寝る時までに 何回くらい尿をしましたか? | 7回以下 | 0 |
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8~14回 | 1 | |
15回以上 | 2 | |
2.夜寝てから朝起きるまでに、 何回くらい尿をするために起きましたか? | 0回 | 0 |
1回 | 1 | |
2回 | 2 | |
3回以上 | 3 | |
3.急に尿がしたくなり、 がまんが難しいことがありましたか? | 無し | 0 |
週に1回より少ない | 1 | |
週に1回以上 | 2 | |
1日に1回くらい | 3 | |
1日2~4回 | 4 | |
1日5回以上 | 5 | |
4.急に尿がしたくなり、 がまんできずに尿をもらすことがありましたか? | 無し | 0 |
週に1回より少ない | 1 | |
週に1回以上 | 2 | |
1日に1回くらい | 3 | |
1日2~4回 | 4 | |
1日5回以上 | 5 |
質問3が2点以上あり、合計点数が3点以上であれば過活動膀胱の可能性があります。合計点数が5点以下の方は軽症、6~11点の場合は中等症、12点以上の方は重症となります。
過活動膀胱の治療は薬物療法が中心になり、主に抗コリン薬とβ3作動薬というお薬が使われます。
その他、膀胱にためることのできるおしっこの量を増やすための「膀胱訓練」や、尿道を締める力を鍛えるための「骨盤底筋体操」というトレーニングも効果があります。
尿道などを支えている骨盤底筋などの働きが弱くなることで尿道をうまく締められなくなり、おなかに力が入ったときに尿もれを起こす病気です。
加齢や肥満、出産、女性ホルモンの低下などが関係しています。過活動膀胱と腹圧性尿失禁の両方の症状がみられる方もいます。
次のような強い腹圧がかかるような動作をしたときに、尿がもれてしまいます。
腹圧性尿失禁の治療の中心は「骨盤底筋体操」で、尿道を締める力を鍛えることにより尿もれを防ぎます。
尿道を引き締める働きがあるお薬を使うこともありますが、改善がみられない場合は、尿道を吊り上げる手術(尿道スリング手術)などが行われます。
血尿は、顕微鏡的血尿と肉眼的血尿に分けられます。
顕微鏡的血尿とは、見た目では尿の色の変化はわからないものの、尿検査をすると尿に血が混じっている状態です。
一方、肉眼的血尿は、血が混じっていることを目で見て判断できる尿のことで、一般的には顕微鏡的血尿よりも重大な病気がかくれている可能性が高いとされています。
幼児期に夜寝ている間におもらしをすることを「おねしょ」といいます。5歳以降で月1回以上のおねしょが3ヵ月以上続く場合は「夜尿症」といい、治療の対象となることがあります。
夜尿症は6歳児の10~20%、小学校高学年の約5%にみられるといわれています。特に何も対応しなくても1つ年をとるごとに10~15%ずつ治っていきますが、継続的に治療することで、何もしないより2~3倍早く治ることが期待できます。
夜尿症は、夜眠っている間につくられる尿の量と、その尿をためる膀胱の大きさとのバランスがとれていないために起こるもので、「多尿型」「膀胱型」「混合型」の3つのタイプがあります。
夜間尿量とがまん尿量(おしっこをがまんして、もうだめだ、というときの尿量)を測定することで「多尿型」か「膀胱型」かを見分けることができます。
治療の第一歩は生活改善でこれが夜尿症治療の基本となります。
「水分の取り方に気を付ける」といった生活改善だけでも約2~3割のお子様は夜尿症を卒業できるといわれています。生活改善によっても効果が不十分な場合は薬物療法やアラーム療法を行うことになります。
近年、男性でも中高年期を迎えると、女性の更年期障害と同じような症状を認めることが明らかになり、男性更年期障害といわれています。男性更年期障害は、アンドロゲン(男性ホルモン)の低下がすべての原因ではなく、社会的ストレスや環境の変化などによって生じていることもあります。
こうした中で、加齢にともなうアンドロゲンの低下による症状を認める状態をLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼んでいます。
LOH症候群では、筋力の低下、内臓脂肪の増加、認知力の低下、抑うつ、疲労感、睡眠障害、性欲の低下、ED(勃起障害)など様々な症状がみられます。
LOH症候群の診断は、更年期症状の評価と、主要な男性ホルモンであるテストステロンの測定により行います。テストステロンの中でも遊離テストステロンの値が低ければ、アンドロゲン(男性ホルモン)補充療法の適応になります。
アンドロゲン補充療法に使うお薬には、注射薬、飲み薬、塗り薬の3種類があり、患者さんのご希望や病状によりいずれかを選択します。
アンドロゲン補充治療により筋力の増加、体脂肪量の低下、認知力の維持、抑うつの改善、性欲の維持などが期待できる一方で、前立腺肥大症の増悪や前立腺癌の進展といった副作用にも注意が必要です。